大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(行コ)238号 判決

一、土地改良事業を行うにあたっては、従前地の実測面積を基準としてその計画、処分を行うのが合理的であることはいうまでもないところであるが、その施行地域が広範囲であり、かつ境界が明確でない湿田、沼沢地を広範囲に含むような場合などにおいては、実測面積を右の基準とすることは、測量のために莫大な費用と労力を要し、また計画の実施を著しく渋滞させるから、特に希望する者に限りその者の費用において実測した地積により得る途が開かれているのであれば、原則として公簿面積を右の基準とすることもやむをえない措置であり、一般に、公簿面積(登記簿上の地積)が真正な地積(実測面積)と異なる場合には、当該土地の所有者は、何時にても地積の更正の登記を申請して、公簿面積の誤りを是正することができるのであり、むしろ遅滞なく右の申請をすることが不動産登記制度上望まれるところであって、公簿面積を基準として一時利用地の指定又は換地処分が行われる場合に、公簿面積が実測面積より小なるため不利益を受けるべき土地の所有者は、その不利益を除去する措置として右の地積の更正の登記をすみやかに申請すれば足りるわけであるから、かかる基準による一時利用地の指定も憲法第二九条の規定に違反するものではないと解される。

前記認定の事実によれば、被控訴人の定款及び規約上は、組合員が実測面積を基準として換地又は一時利用地の指定を受けることができる途を開いた規定は設けられていないので、一般的に右定款及び規約に基づいて行われる一時利用地指定処分が瑕疵を帯びる可能性のあることは否定することができない。しかしながら、右のような処分により不利益を受ける者は、前記のとおり、公簿面積の誤りを是正してそれを実測面積と合致させる地積の更正の登記を申請することができるのであり、かかる方法により実測面積に合致させた上でこれを基準とする一時利用地の指定又は換地処分を行うこととするのが、公簿面積を是正する途を採らずに、個々的に実測面積を届出させる等の方法によるよりも適正妥当であり、しかも、前記認定の事実によれば、控訴人は本件土地改良事業による換地は従前地の公簿面積を基準として行われるものであり、公簿面積と実測面積とが異なる場合には公簿面積を訂正することによりその不利益を免れることができることを基準日である昭和四七年七月一日よりかなり前から知悉していたものと認められるから、控訴人が遅くとも基準日である昭和四七年七月一日までに登記簿上の地積を実測面積と一致するよう訂正することは十分可能であってたものと考えられ、したがって、本件においては、控訴人にとって実質的に実測面積によりうる途が開かれていたものと解して差支えはなく(土地改良区の場合には法律上地積に関する事項を定款で定めることは要求されていない。)、それにもかかわらず控訴人はこれを実行しなかったばかりでなく、かえって従前地の地積の基準として公簿面積によることに賛成していたのであるから、仮に本件従前地の実測面積が公簿面積を上回るものであったとしても、控訴人に対する本件一時利用地指定処分を違憲、違法ということはできず、したがって、これを無効ということはできない。

二、土地改良法第五三条の五の規定に徴すれば、従前の土地ごとにこれに代わるべき一個の一時利用地の指定がなされるのが原則であると解されるが、一時利用地の指定は、土地の所有権の帰属に変動を生じさせるものではなく、土地改良事業の完了まで長期間を要することから、従前の土地についての使用収益権の利益を暫定的に保持させるため、指定された一時利用地において使用収益をすることができる効果を生じさせるにすぎないものであるから、従前の土地についての使用収益の実態に応じ、より便益的であると認められる場合は、右の原則によらないことも許されるものと解すべきである。すなわち、所有者を異にする数筆の土地について各所有者が共同で全土地を使用収益しているような場合において、各所有者が右各土地について一括して一個の一時利用地の指定を受けることに同意し、その旨の指定をするよう申出ているときには、所有者を異にする数筆の土地について一括して一個の一時利用地を指定することも違法ではないと解すべきである。

(香川 越山 村上)

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